2019年10月18日金曜日

キリスト教の一教派であるオリベット・アッセンブリーについて

日本オリベットアッセンブリー教団は、プロテスタントの諸教派・教団が掲げる信仰告白と大して変わりのない信仰告白を掲げるキリスト教の一つの教派です。長老派の流れを汲みますが、神学校の設立時の教授陣を南部バプテスト連盟(SBC)の宣教学者・神学者らが占めていることもあり、宣教第一の情熱はSBCに劣らない牧師・宣教師らが開拓伝道に励んでいます。

日本オリベットアッセンブリー教団は、2017年に静岡県小山町の研修施設をワールド・オリベット・アッセンブリーの資金援助によって日本オリベットセンターとして購入し、教団本部兼、神学校(将来)兼、修養会場として使うようになりました。

2021年から2022年にかけて、オリベットアッセンブリーの世界宣教の働きは躍進し世界160カ国以上に宣教師を派遣し、現地の建物を購入したり借りたりしてそこに十字架を掲げ、または教会として以前使用されていた物件を世俗の不動産業者から多数買い上げてリフォームして再び教会として復活させ、経済的に自立した状態で信徒0からの開拓伝道を盛んに行っています。

2022年末には日本オリベットアッセンブリー教団が以前日本バプテスト連盟天城山荘であった土地建物の賃貸借契約を不動産開発会社と締結し、教団本部を静岡県小山町から同県伊豆市の同施設に移転しました。

どっからそんなお金が出てくるんだ?と思われる人が多いようですが、故ラルフ・ウィンター教授の助言を元に張在亨牧師が設立したオリベット大学にはMBA(経営学修士)のコースがあります。

これは私利私欲のためや自己実現のために世俗的な金儲けや事業の成功を目的とするビジネスマンや経営者を養成するための学部ではなく、ビジネスを通して商品やサービスと同時に利益を生み出し、生産された商品を一部教会や宣教に従事する献身者に寄贈し、また、サービスを無料で提供し、そしてさらに利益の一部を献金することで「副次的に世俗社会に役立つ製品やサービスを提供することで利益を上げると同時に社会貢献しつつも、製品やサービスの無料提供や献金を通してキリスト教宣教に貢献することを第一義の存在目的とする企業の経営者」を多数育成し、若くて先進的な技術に明るく、起業家精神あふれる人材を訓練し、宣教のために送り出すことを目的とした学部です。

その経営学部を卒業した学生たちが多数コストがかからないネット起業をして、もちろんほとんどは事業に失敗するわけですが、コストが掛からないので無傷で再挑戦がすぐにできますから、何年かすると成功する事業も出てくるわけです。その成功したベンチャー企業にオリベット大学を卒業した人たちがわっと入ってきて「キリスト教宣教のために心を一つにして」ビジネスをし、生産した商品やサービスを無料で教会に提供し、有料で世俗社会に提供し、利益の一部は献金して、オリベット大学神学部を卒業して牧師になった人たちによって構成された教会が集まってできた教団であるオリベットアッセンブリーの宣教に貢献してきたということです。

成功要因は

1)宣教のために貢献するという起業のビジョンに賛同する献身者だけが集まったこと

2)情報技術の発達によって起業にかかるコストが0になる時代であり失敗してもダメージなしで再チャレンジできること

3)経営のプロである経営学の先達をオリベット大学という教育と訓練の場に呼んで、神学者と経営学者が宣教のために協力し、学生に徹底的に経営と神学を学ばせ訓練したこと

4)これらの相乗効果を計画的に見込んで大学、教会、企業という連携関係を構築したこと

これら4点が挙げられると思います。日本でも相乗効果を狙って産学官連携を盛んに宣伝するではありませんか。[1][2][3]オリベットがやったのはいわば産業・官庁・学問の連携の代わりにキリスト教起業家の経営する産業(産)・キリスト教宣教のために存在する神学と神学以外の宣教のための実学を教育訓練する大学(学)・教会や教団(教)の連携、造語すれば「産学教連携」を実現させたことになります。

お金の話が出たのでオリベット大学経営学部の話題になりましたが、オリベット大学において一番大事な学部は神学部です。神学の中でも宣教学はもっとも重要な分野の一つとして捉えられています。もちろん、聖書神学、組織神学、歴史神学なども当然重要な学問として学びます。ただ、神学部の学生だけが神学を学ぶのではなく、神学部以外の実学を学ぶすべての学生が必須科目として神学の単位を相当数取ることが義務となっています。それはオリベット大学という大学が、神学を学ぶ人は伝道と牧会によってキリスト教宣教に貢献する献身者として派遣され、実学と神学を学ぶ者は実学に裏付けられたプロフェッショナルな技能や職能によってキリスト教宣教に貢献する献身者として派遣されるというラルフ・ウィンター教授直伝の実践的宣教学を基礎にし、これを大学レベルの教育と職業訓練に昇華・適応させた大学だからです。

情報技術専攻の人、グラフィックデザイン専攻の人、音楽専攻の人、教育学専攻の人、言語学専攻の人、農学専攻の人、都市工学専攻の人、建築学専攻の人、ジャーナリズム専攻の人、いろいろな専門分野はありますが、全員神学は必須科目であり、職能を生かして全員キリスト教宣教のために奉仕する献身者となることを前提に入学する大学だということです。

プリンストンやハーバードなどの大学には確かに神学校や神学部があります。しかし、神学部以外の学生がキリスト教宣教のために一生を捧げる召命を受けた献身者でしょうか?そのために工学や経営学と一緒に必須な学問として神学を学ぶでしょうか?卒業後それら実学の学徒の全員がキリスト教宣教のために奉仕者として派遣されるでしょうか?むしろプリンストンもハーバードも「教会の子」と呼ばれ牧師を養成することを第一義の目的として設立され、存在していたのにいつの間にか世俗的な学問の追求を目的とした機関になってしまったのではないか?と存命中のラルフ・ウィンター教授は語っていました。そして講演の中でオリベット大学の学生や教職に問いかけました「大学とは何か?」と。僕もその場に座ってその問いかけを直接耳にし、自分が今学んでいる大学は何かを再確認する機会となりました。[4]

フラーやゴードン・コンウェルは素晴らしい神学校です。学校を卒業する人たちはキリスト教宣教に貢献する献身者となることが前提となっています。しかし、伝道や牧会の現場で情報技術や建築などの実践的な技能を持った献身者が万全のサポート体制を作って支えてくれたら総合病院の心臓外科医が心臓の手術だけに専念するように、使徒たちが7名の執事を任命して自分たちは御言葉の奉仕に専念したように、シラスとテモテがマケドニアから下ってきた後のパウロのように、牧師や宣教師は伝道と牧会だけに集中することができるのではないでしょうか?パウロの自立宣教が悪いというわけではありません。環境や事情によってやむを得ない場合があるのは確かでしょう。しかし、逆に分業による効率化が悪いとも聖書には書いてありませんし、むしろ肯定的に書いてあるのではないでしょうか?

オリベット大学はまた、オリベット・アッセンブリーという教派の教派神学校でもあります。オリベット・アッセンブリーもオリベット大学も世界宣教のビジョンを共有しています。「産学教連携」の他、オリベット・アッセンブリーの世界宣教の特徴として挙げることができるものがあるとすれば「仕える本部主導の都市拠点宣教」でしょう。仕える本部というのは支配する本部の対義語です。仕える者が主人であるとの言葉に従い、開拓教会が必要とする人的・金銭的・技術的な資源をできるかぎり支援し、祈り、支え、励まし、慰める本部的な場所、宣教の現場から帰ってきて充電できる場所、ペテロにとってのエルサレム教会、パウロにとってのアンティオキア教会のような場所を本部だと定義しましょう。

世界宣教を本当に世界規模で実行した人たちの歴史を見れば、世界宣教の本部とはイエズス会にとってかつてはジェス教会であり現在の総本部(General Curia of the Jesuits)[5]であり、18世紀ドイツのモラヴィア兄弟団にとってのヘルンフート(Herrnhut /ドイツ語で主の守りの意)であり[6]、アメリカの南部バプテスト連盟の国際伝道局 (International Mission Board)[7]であり、同様にオリベット・アッセンブリーという教派にとってはワールド・オリベット・アッセンブリー(WOA)の世界本部(Headquarter / HQ)[8]に相当します。イエズス会も南部バプテスト連盟もWOAも世界本部は各大陸を枝としています。

WOAの場合は世界本部が各大陸のオリベット・アッセンブリーに仕え、各大陸のオリベット・アッセンブリーは大陸の本部として機能し、その大陸にある国のオリベット・アッセンブリーに仕え、その国のオリベット・アッセンブリーは各都市の教会での開拓、学校教育、医療や保育などの社会福祉活動、キリスト教宣教を第一義とする起業と事業経営などを行って、それぞれ財政や意思決定における独立を保ちながら救霊のために協力するというビジョンがあります。もちろん都市によっては小さな賃貸の開拓教会だけが存在する場所もありますし、1000人が入る教会堂のある都市もあれば、大学のキャンパスがある都市もありますが、基本的には郊外の本部と都市の宣教拠点に分かれて連携しています。日本オリベットセンターの役割は、オリベット・アッセンブリーという福音主義のキリスト教の一教派の献身者が日本の各都市で行う開拓伝道を国の本部として、修養会の会場や教育機関として、物心両面で彼らをサポートすることです。

組織神学(キリスト教思想史)とジャーナリズム学の他に行政学を専攻した張在亨牧師は国家行政の改善や分析研究のために用いられる各種の行政学的手法や行政学的概念を世界宣教を実行する組織の組み立てのために役立てようとしました。[9]世界本部と各大陸、大陸本部と国の本部、などの仕事の進め方や関係の作り方を議論する際に行政学における「スタッフとライン」の概念などを用いて世俗社会の行政における官僚主義や縦割りの弊害などの失敗例を反面教師とし、逆にニュー・パブリック・マネジメント(NPM)による成功例などは積極的に学ぶことを通して世俗の実学である行政学で得た見地を生かすことで、現在のWOAのネットワークの枠となるものを準備しました。

別にこれしか方法がないとか、他の方法は悪いとか主張するのが僕の目的ではありません。いろんな方法があって良いと思いますし、キリスト教界の多様性は肯定されるべきであり、否定されてはいけないと思います。ただ、ラルフ・ウィンター教授は何をしたかったのか、張在亨牧師はオリベット大学を何のために設立し、オリベット・アッセンブリーは何のために存在して、その教派の教会の献身者たちはどんな夢を持ってどんな奉仕をしていて、どんな組織形態で、どこから金が出ているのか?

知ってみると皆さんの通ってらっしゃる教会や世界の他の宣教組織と同じく、イエス・キリストによる救いを伝えているだけなのです。新しい時代という新しいぶどう酒があれば、それに合わせて入れ物である組織も新しい形態と効率的な運営法を持ち得ると思います。(マルコ2:22)この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないものなので行政学も情報技術も不正の富となり得るのではないでしょうか?(ルカ16:8-9)そのようにしてできたWOAが立つか倒れるか、義である天の父なる神様がなさるがままに任せてみてはいかがでしょう。

どのような方法であるにせよイエス・キリストの十字架と復活による罪の贖いと救いが宣べ伝えられるよう努める責任がクリスチャンには誰にでもあり、オリベット大学の教職も学生も、設立者の張在亨牧師も、設立するよう指導したラルフ・ウィンター教授も、皆一人のクリスチャンとして一人の福音主義者として、ウィリアム・ケアリー、ドワイト・ムーディー、デイヴィッド・リヴィングストンなどの先人が夢見たのと同じ世界宣教の夢を共有し、そのために祈り、大宣教命令の召命に対する個人の応答として、各人にできる最善を尽くしているだけなのです。

あなたはどう読み、どう応答しますか?

イエスは近づいて来て、彼らにこう言われた。「わたしには天においても、地においても、いっさいの権威が与えられています。それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。そして、父、子、聖霊の御名によってバプテスマを授け、また、わたしがあなたがたに命じておいたすべてのことを守るように、彼らを教えなさい。見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます。」マタイ28章18から20節



以前南部バプテスト連盟のゴールデンゲートバプテスト神学校のキャンパスであった土地と建物が一般の不動産開発企業に売却された後、オリベット大学サンフランシスコ校神学校として復活することになった事例。写真は同校を会場に開催されたワールドオリベットアッセンブリー第26回世界総会。



参考文献

[1]原山優子「産学官連携とは?」産学官連携ジャーナル2005年7月号 https://sangakukan.jst.go.jp/journal/journal_contents/2005/07/articles/0507-09/0507-09_article.html

[2]文部科学省科 学技術・学術審議会技術・研究基盤部会・研究基盤部会 答申 資料4 新時代の産学官連携の構築に向けて(審議のまとめ)「産学官連携の意義」2003年4月28日  http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu8/toushin/attach/1332039.htm

[3]経済産業省、文部科学省 共同開催 理工系人材育成に関する産学官円卓会議「理工系人材育成に関する産学官行動計画」2016年年8月2日  https://www.meti.go.jp/press/2016/08/20160802001/20160802001-1.pdf

[4]古屋安雄「大学の神学的理念と課題」日本の神学32号1993年

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nihonnoshingaku1962/1993/32/1993_32_7/_pdf

[5]イエズス会総本部「協議会」

https://sjcuria.global/en/general-council

[6]相賀昇「ベルリン便り5 境界と相克を越える敬虔―ツィンツェンドルフ伯の生誕三百年を覚えて」福音と世界 2000年8月

http://www015.upp.so-net.ne.jp/tsuzukich/sekkyou/berlin2.htm

[7]米国南部バプテスト連盟国際伝道局「人々と各地域」

https://www.imb.org/people-and-places/

[8]ワールド・オリベット・アッセンブリー「会員」

https://worldolivet.org/members

[9]今里滋「アメリカ行政学の回顧的展望 : 事例研究と組織研究」法政研究. 63 (3/4), pp.417-490, 1997年3月21日 九州大学法政学会 

https://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac_download_md/2074/KJ00000692697-00001.pdf



オリベットアッセンブリーに関するリンク集


World Olivet Assembly(WOA)世界本部ウェブサイト

https://www.worldolivet.org/


アフリカ大陸のオリベットアッセンブリー本部

http://olivetafrica.org/


オセアニア地域のオリベットアッセンブリー本部

https://olivetoceania.org/


南アジア地域のオリベットアッセンブリー本部

http://olivetsouthasia.org/


アジア太平洋地域のオリベットアッセンブリー本部

http://www.olivetasiapacific.org/


東南アジア地域のオリベットアッセンブリー本部

http://olivetsea.org/


CIS(独立国家共同体)地域(旧ソ連諸国)のオリベットアッセンブリー本部

http://olivetcis.org/


北アメリカのオリベットアッセンブリー本部

http://olivetassembly.org/


ラテンアメリカのオリベットアッセンブリー本部

http://olivetsa.org/


ヨーロッパのオリベットアッセンブリー本部

http://www.oliveteurope.org/


WOAニュースサイト(機関紙、Olivet News)

https://olivetnews.org/



オリベットアッセンブリーの教派神学校と大学

Olivet University(各国政府から大学認可を受けて学位授与を目指すタイプの学校)

https://www.olivetuniversity.edu/


Olivet Theological College & Seminary (神学部)

https://otcs.olivetuniversity.edu/


Jubilee College of Music(音楽学部)

https://jcm.olivetuniversity.edu/


Olivet School of Media and Commuinication(メディア・コミュニケーション学部、旧ジャーナリズム学部)

https://osmc.olivetuniversity.edu/


Olivet School of Art & Design (芸術・デザイン学部)

https://osad.olivetuniversity.edu/


Olivet Institute of Technology(情報工学部)

https://oit.olivetuniversity.edu/


Olivet School of Language and Education (言語・教育学部)

https://osle.olivetuniversity.edu/


Olivet Business School(経営学部)

https://obs.olivetuniversity.edu/


Olivet School of Enginering and Architecture(土木・建築学部)

https://osea.olivetuniversity.edu/


Olivet Seminary(学位授与は目的とせず牧師養成を目的とする神学校)

https://olivetseminary.org/


Olivet Academy (幼稚園小中高一貫校、3カ国6都市)

http://www.olivetacademy.org/



WOAの宣教協力団体

Olivet Leadership Institute (指導者養成機関)

https://olivetinstitute.org/


Jubilee World(音楽宣教団体)

https://www.jubileeworld.org/


Faith & Family Foundation(ファミリー・フォーラム・ジャパンのような団体)

https://faithnfamily.org/


Elim Center(祈祷院・祈りを主たる活動とする団体)

https://www.elimcenter.org/


Youth Evangelical Fellowship(青年宣教団体)

https://www.yefi.org/


Apostolos Missions International(宣教団体)

https://amintl.org/


Young Disciples International(華人華僑を主な対象とした青年宣教団体)

http://youngdisciples.org/


Saint Luke Society(医療宣教・奉仕団体)

https://www.saintlukesociety.org/


Gospel & Information Technology(技術者の宣教・奉仕団体)

https://www.gnit.org/


Creatio International(芸術家・デザイナーの宣教・奉仕団体)

https://www.creatiointl.org/


Olivet Teen Mission(中高生伝道会・hi-b.a.のような団体)

https://olivetteens.org/


Veritas Society(法曹宣教・奉仕団体)

https://www.veritassociety.org/


Barnabas Relief Fund(社会的弱者の支援と福祉のための基金・財団)

https://www.barnabasrelief.org/


Nehemiah Project(売却された旧キリスト教施設の修繕・復旧・内装改築の専門家らの奉仕団体、大工さんたち)

https://nehemiahproject.com/


Holy Bible Society(電子聖書の技術開発と普及のための団体)

http://www.holybiblesociety.org/



2023年1月10日更新

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